京都の人気外食店「佰食屋」が考える働き方改革とは

佰食屋チラシ

こんにちは。
代表の渕脇です。

弊社は、働く人たちの健康を守ることを仕事にしているので、「働き方改革」にはとても興味があります。
そんな中、京都で大人気なっている外食店「佰食屋」さんが話題になっています。

「佰食屋」のホームページ

佰食屋さんは、その名の通り、どんなに売れても100食しか提供しない。
しかも、ランチしかやらない。
というのです。

そのコンセプトはいったいどこから出てきたのか。

先日、佰食屋を経営する、中村朱美さんの講演を聴く機会に恵まれました。
もう、何から何まで、新鮮な発想だったので、ここにシェアをしたいのですが、全部をお伝えすることができないと思うので、私が気になったことだけをピックアップしたいと思います。

アイディアの源泉は子どものころのある思いにあった

このような、短時間経営で限定百食というスタイルを作りに至ったのは、中村さんの生い立ちに原点があるそうです。

中村さんは、ホテルのコックをしていた父親とウェイトレスをしていた母親の間に生まれました。
中村さんの小さいころの夢は、「お父さんと一緒に晩御飯を食べたい」ということ。

仕事が仕事だけに、お父さんはいつも帰宅が遅く、小さいころの中村さんは、お父さんが帰ってくるのを待って、お休みを言ってから寝るのが習慣だったそうです。

ましてや、一緒に晩御飯を食べるなんてことはなく、そういう食卓を憧れていたとのこと。

それが、佰食屋のコンセプトをつくる原体験だったというのです。

中村さん自身は、「佰食屋」を始める前は、外食産業の経験もなく、さらには経営の経験もなかったそうです。
中村さんと結婚したご主人は不動産屋の営業マンだったそうですが、料理が趣味で、とてもおいしい料理を作ってくれたとのこと。
この美味しい料理をたくさんの人に食べてもらいたい、という思いから、ご夫婦でお店を始めたのがきっかけだったとのこと。

すなわち、ご主人も外食産業には縁がなかった人だったのです。

つまり、素人同士で作った店、ということのなのです。
ある意味で、素人同士だったからこそ、自由な発想ができたのかもしれません。

100限定にするメリット 

100食限定にすると、いろいろなメリットがあると言います。
そのメリットはどんなことがあるのでしょうか?

フードロスゼロ

まず、100食限定なので、いつも売り切れてしまいます。
すると、食材をキープしていく必要が無いし、さらには、廃棄することもなくなるというのです。
したがって、佰食屋には冷凍庫がない、とのこと。
これは驚きですよね。

しかも、在庫確認の必要もなければ、発注業務も簡素化することできて、これもまた、従業員の負担をものすごく軽減させているというのです。

集客効果

人は限定品に弱いですよね。
100食限定とすることで、希少価値が生まれて、それが口コミを起こします。
口コミを起こすので、お客様が勝手にSNSなどで拡散してくれて、広告宣伝費がいらないとのこと。
さらに、そのおかげで、テレビや雑誌などの取材が来てくれるので、ますます宣伝費がいらないとのことです。

宣伝費がいらないので、その分を原価に上乗せすることできて、原価率50%を実現しているとのこと。
普通の外食屋さんでは、原価率は20%から、高くても30%程度とのこと。
原価率が高いということは、良いものを安くで提供できるということ。
このことがまた、口コミを起こすことになり、さらに収穫効果を上げているというのです。

経営が簡単になる

毎日、100食を売り切れば、黒字になるように設計しているので、収益構造がシンプルになって安定するというのです。

売り上げや忙しさに波があると、その波に合わせて、経営をやりくりしなければならなくなります。
好調の時に人を増やしたりすると、不振になった時に人を切らなければいけなくなる。
できればそういうことをしたくないので、売り上げが安定するということが、経営を単純にしてくれるというのです。

早く帰れる

そして、何よりも、営業時間が短いので、従業員が早く帰れるというメリットがあるというのです。

早く帰ることできるので、いろいろな事情を抱えている人が働けるようになります。
小さい子供を抱えている人とか、高齢者とか、様々な人が働いているとのこと。

さらに、早く帰れるので、家族と一緒に夕食をとることができるのです。

社員教育について

社員教育についても、面白いお話をされていました。

役割分担を明確にする

佰食屋では、役割分担を明確にしています。

会社(経営層)の仕事は、集客、広報、営業など、現場の従業員は、接客などです。
現場の従業員に、経営のことを考えろとか、集客のことを考えろ、という教育はしない、というのです。

とにかく、お客様に気持ちよく食事を提供すること。
それだけを考えていればよい、という教育をしているそうです。
そのためのマニュアルもない。
マニュアルがないので、自分の頭で考えて動く。
儲けとか売り上げとかを考える必要がないので、純粋にお客様に対するサービスを考えることができ、きめ細やかで臨機応変なサービスを提供できるとのことです。

従業員の幸せを考える

人は、自己決定権があると幸せを感じるとができると言います。
佰食屋では、出勤時間も退勤時間も自分で選ぶことができます。
さらには、有給休暇も公休も、自分で決めることができます。
上司の許可を取る必要は全くない、と事です。

このような制度を設けていることで、従業員は働き甲斐を感じ、気持ちよく働いてくれるというのです。

さて、ここで、「そういうことをしていたら、例えば、この日は人が足りない、とか、そういうもん医大は起こりませんか?」という質問が出るのですが、それに対する答えは、常に一人から二人、多めに採用している。という答えが返ってきました。

つまり、休む人がいるという前提で、余裕のある人数で回している、ということなのです。
効率を重視して、また、利益率を重視して、人員をギリギリに保つのではなくて、余裕を持たせることによって、一人人にかかる負担を軽減させるわけです。

この会社の姿勢が従業員に伝わっているので、それが愛社精神をはぐんでいるのだと言います。

これからの経営について

今後、日本は人口が減少していきます。
経済が右肩下がりの時代に入ります。
そんな時に、内部留保をできるだけ増やすとか、前年と比べて売り上げを伸ばしていくとか、無理じゃないですか?

と中村さんは問いかけます。

たとえ、売り上げを減らしても、社員の幸せを思い、その生活を支えることが大切なのではないか。
そして、事業を通じて、社会を良くしていくこと。
それが、これからの経営の目的になるのではないか、と中村さんは考えているそうです。

そして、これからの経営には、【愛】と【感謝】が必要なのではないか、と訴えます。

私の感想

中村さんのお話はとても面白く、関西弁の語り口はとても楽しかったです。
そして、その内容も、愛にあふれていました。

働き方改革が叫ばれていますが、ただ、単純に働く時間を減らすだけでは、根本的な改革にはなっていないと感じています。

むしろ、時間を減らすことが、従業員の努力目標のようになっていて、さらにそれが余計なプレッシャーになっているという話も聞きます。

本物の働き方改革というのは、短時間でも事業が回っていく、そういうビジネスモデルを構築することなんだと思います。
ビジネスモデルを変えずに、ただ、現場の社員の努力だけで時短を達成するのは、本物の働き方改革とは言えませんよね。

ただ、規則でガチガチ縛れば縛るほど、自由な発想は出てこないだろうし、それでは日本の経済が活性化するとはとても思えないないのです。

中村さんのように、自由な発想をする起業家を育てていく必要があると痛感しました。

まとめ

京都で話題の人気外食店「佰食屋」のビジネスモデルを聴いて、改めて、働き方改革について考えさせられました。

労働人口が減っていく中で、働き方改革は待ったなしだと思います。

どうすれば、従業員が幸せになれるのか。
そして、お客様に質の良いサービスを提供できるのか。

すべての経営者が真剣に考えなければいけない時代になったと思います。